シェルトンはこの新しい映画で、真面目にユーモアを取り入れようとしているのだが
、ラップミュージック界で起こるギャングが絡んだ殺人事件を扱う刑事もの・探
偵もののストーリーは、テーマはかなりタイムリーなものではあっても、コメデ
ィ映画のようにはとても聞こえない。
これはコメディ?アクションや警官もののスリラー?あるいは型破りな人物描写
?それともミステリー?
この映画について私にとっての大きな問題はその答えがわからないことだ。
「Hollywood Homicide」は少しずついろいろな要素を取り入れようとしている。笑わ
せたり、滑稽な場面もあるが、取り立てて面白おかしいわけではない。追跡、ま
た追跡、と忙しい反面あまりエキサイティングではない場面もある。わざわざ(
見に行こうと)決心する人がいるのかどうかはわからない。コメディ、アクショ
ン、型破りなキャラクターをうまく組み合わせた映画も多いが(「明日に向かって撃て!」、「リーサル・ウェポン」がすぐ浮かぶだろう)、それらにはHHには欠けているわかりやすいテンポや一貫
性がある。
この映画はナイトクラブでの激しい銃撃戦で幕を開ける。(信じられないことに
、重要な事柄に気づいた目撃者はこのクラブ全体で「たったひとり」しかいない
ということが後にわかるのだが・・・)フォード演じるベテラン刑事とハートネット演じ
る若手刑事が事実関係を明らかにすべく、警官、ギャング、政界、買収された音
楽界の大御所までもが絡む陰謀を解明しながら、捜査を進めていく。
この映画、「Hollywood Homicide」に大きな問題点は浮かばないが、たくさんの見所
がありながら、出し切っていないようにも思える。
小さな発見:すばらしいロケーション。それがどうしたと思うかもしれないが、
個人的にはLAのメジャーな場所を見るのはとても楽しかった。恐らくそこに住ん
でいる者にしかわからないだろうが、この映画はLAのスピリットをしっかり押さ
えている。
大きな発見:(この映画での)ハリソン・フォードの車は、それ自体はかなりださいの
だが、この数年で一番のいい役を演じる彼を引き立てている。フォードの役は何度も
離婚暦があり、手に負えないほどの借金を抱えており、その解決策もない一人の
警官だ。殺人事件に奮闘しながらも、不動産業者としての副業もこなしている。
哀れにも、契約を取りまとめるために警察関係者まで説き伏せたり嘆願したり切
々と訴える策をとったりもする。そしてその間ずっと車の返還要求をしている債
権者に追われ、彼はクリーニング屋に預けている自分のシャツをとりにいくお金
すらないのだ。
フォードが運に見放された人物を演じるのを見るのは久しぶりだ。ある意味、その役
柄のもろさ、不完全なところはかなり魅力的で面白い。フォードはここ最近の映画に
比べ、落ち着いてリラックスしているように見える。彼の役柄はこれまで演じた
(ジャック・ライアンやマーシャル大統領のような)一般的な「いい人」よりも明確であ
る。彼はまたこの役で、厄介な場面で、タイミングよく、面白い台詞の言い回し
をする。シリアスな場面から奇妙な面白さをもつ場面まで、彼は大変うまく演じ
ている。60代のフォードは年を感じさせることも気にしていないようで、この役柄
においては特にそれがうまく活かされている。(少々滑稽に見えることも恐れな
いフォードに大きな称賛を与えよう)
ジョシュ・ハートネットの役柄はフォードほど変化に富んでいるわけではないが、向こう見ずで
熱くなりやすいとか、教科書どおりに動くというようなありきたりの新米刑事で
はない。ハートネットはスクリーンで目立とうと振舞うことなく、共演者を静かに見
つめ、話を聞いたりしながら、進んで取り組んでいる。期待されるような、先輩
と後輩、あるいは同僚がいつもお互いにいがみあっている「リーサル・ウェポン」のような
力関係はこの映画には見られないのだが、率直にそれは意外と独創的なアイデア
であると思う。ハートネットの役は面白いところもある。彼も夜間にアルバイトをし
ており、美女達に囲まれ熱い視線を浴びるヨガのインストラクターでもある。彼
自身もまた、誰かに指示されるのではなく自らステージやスクリーンを操りたい
と、野心に燃えている俳優だ。シェルトンはここで作品に少しユーモアを加えている
・・・ハートネットの役は俳優として真剣に受け止めるべきものを多く必要としてい
る。--「それ(そういう役を演じること)はこれ以上ない喜びだよ」と彼はかな
り照れくさそうにいうのだが--彼はあまりうまいわけではなく、悲しくも、彼自
身それを穏やかに受け止めているのだ。
この映画は「明日に向かって撃て!」や「リーサル・ウェポン」のような友情ものの映画ではないが、
演じる俳優によってキャラクターの魅力が光っているので、この映画の短所の多
くは許されるものであろう。
ただ、この「Hollywood Homicide」は、面白く、いい仕上がりではあるとはいえ、す
ばらしい才能をもった製作陣・キャストによる作品としては期待はずれなところ
がある。もうすこし大胆さ、滑稽さ、危険な場面を加えるなどして、議論を巻き
起すくらいスリルにあふれる映画にしてもよかったのではないかと思う。結果と
して無難にまとめている感じがする。